PROJECT 02

今までの常識を覆す!
業界初となるバイオマス原料
を含んだ環境配慮型包装材

MEMBER

若手の常識にとらわれない発想が、
他社に先駆けた製品を生み出す

  • S.Y.

    フィルム商品開発部
    2015年入社
    本製品の開発から営業まで全フローを主導

  • H.T.

    包材事業部 ボンセットグループ
    2002年入社
    プロジェクトでは主に営業を担当

  • T.U.

    岡山工場 製造グループ
    2008年入社
    プロジェクトでは主に製造を担当

左からH.T.、S.Y.、T.U.

PROLOGUE

近年、ビジネスの世界で当たり前になりつつある環境への配慮。深刻化する環境問題に対して企業の責任が問われている。当社でも「人と地球にやさしい未来を創造する」ために、カーボンニュートラル(実質排出量0)の実現を目指し、CO2排出量削減や気候変動問題に取り組んでいる。
こうした取り組みの一環として開発されたのが、今回ご紹介する「BP10」だ。ペットボトルのラベルに使われる「シュリンクフィルム」に植物由来の原料を配合した製品で、温室効果ガスの排出削減に貢献できる。また、一定の水準で生物由来の資源を使用し、環境に優しい商品のみ取得できる「バイオマスマーク」を保有している。

このBP10の開発を主導したのは、当時入社2年目のS.Y.。先輩社員の力を借りながら、当社の主力商品を生み出した奮闘の裏側を追う。

Part.1
エコな新製品の
開発に若手が大抜擢

ペットボトルは、商品ごとに形が異なり、膨らみや凹みが存在する。
しかし、どんなペットボトルにもピタリとラベルが巻き付けられている。なぜ形の違うボトルにラベルを綺麗に巻けるのか。それは、「シュリンクフィルム」という特殊な素材があるからだ。シュリンク(shrink)は英語で“縮む”の意味で、一定の温度に加熱すると縮むことから名付けられた。このフィルムをペットボトルに巻き、熱で縮ませることで皆さんが目にする商品フィルムが完成する。当社の主力製品の一つだ。

このシュリンクフィルムの環境対応製品を開発するプロジェクトの主担当に抜擢されたのが、当時入社2年目のS.Y.である。当時は2017年ごろで、企業が環境問題への対応に本格的に着手し始め、様々な包装資材に植物由来のバイオマス原料を使ったものが増えてきた時期だった。とはいえ、バイオマス原料を使ったシュリンクフィルムはまだどこも開発していなければ、市場のニーズがあったわけでもなかった。それでも、「近い将来、絶対にエコなラベルが求められる日がくる」と確信した事業部長が開発を決め、新人のS.Y.に開発の主担当を任せた。

S.Y.は当時をこう振り返る。「当社には「若手に任せてみよう」という文化があります。ベテランは長年携わっている研究テーマを続けて行うことが多いので、新規開発は新人のうちから任せてもらえるんです。それまでは開発のアシスタント的な役割だったので、初めて主担当を任せていただき、気合十分でしたね」。

  • ハイドロタイト製造過程
  • ハイドロタイト製造過程

  • ハイドロタイト製造過程
  • ①BP10の原料となる「シュリンクフィルム」

Part.2
自分を信じて、
やれることは全て試す

この開発は、他社に先駆けた挑戦で、成功すれば大きなリードを獲得できる。しかし、そこには他社が取り組まないだけの理由があった。シュリンクフィルムにバイオマス原料を混ぜ込むと、品質の劣化が避けられないのだ。
ベットボトルのラベルで大事なのは、透明さである。濁ったラベルを使用すると、せっかくの商品の印象が悪くなるからだ。しかし、バイオマス原料の割合を増やせば増やすほどラベルは白濁していく。通常、製品で使用されるポリスチレンに対し、バイオマス原料はポリエチレンであり、2つはいわば「水と油」の関係だ。うまく混ざり合わないために濁りが生じてしまうのである。シュリンクフィルムの開発に携わっていれば誰でも知っている常識で、わざわざ試そうと思う人はまずいない。

他社が取り組みたがらない難題であったが、S.Y.はむしろ「チャレンジングなテーマで、やりがいがある」とポジティブに捉えていたという。若手の自分に与えられたチャンスを逃すまいと必死に開発に取り組んだ。
製品開発では、濁りが抑えられるバイオマス原料を徹底的に調べ上げ、手に入る全ての原料で試験した。「原料を扱っているメーカーに問い合わせると、思ったほど数が多くなかったんです。学生時代は生物系の研究をしていて、ポリマーにはあまり詳しくなかったので、この数なら全部試した方が速いと考えました。半年ほどかけて実験を繰り返したので、大変でしたね」(S.Y.)。

こうしてS.Y.は、一番濁らない原料を選び抜き、白濁しない限界のバランスを見つけ出した上で試作品を完成させる。営業を担当した先輩のH.T.に協力してもらい、興味をもってくれそうなお客様にヒアリングする機会を得た。

その場でお客様からいただいたご要望は、「バイオマス原料の割合を増やしてほしい」というもの。試作品では白濁しないよう3%の配合にしていたが、お客様は10%以上の配合なら購入を検討すると話した。10%以上の配合になると、一般社団法人日本有機資源協会のバイオマスマークを取得でき、環境に配慮していることを消費者にアピールしやすいからだ。H.T.は「確かに3%はインパクトに欠ける数字で、お客様のご指摘も納得でした」と当時を振り返る。

そこでS.Y.は、10%の配合の製品を試作することに。しかし、やはり割合を増やすと白濁が目立つ。部内からは「濁っていて売れないのでは」という指摘もあった。それでもS.Y.は、実際にお客様と話した経験からこう考える。「このくらいの濁りなら気にしないお客様もいる。何より、環境に配慮するのはこれからの企業に絶対欠かせないものになるはずだ。この程度の濁りなら大丈夫」。こうしてS.Y.は、バイオマス原料を10%配合した製品をつくることに決めた。BP10が誕生した瞬間だ。

  • 施工イメージ
  • 施工イメージ
  • 施工イメージ

  • ②施工イメージ

Part.3
若手をサポートする連携が
タキロンシーアイにはある

グループ会社の協力を受けながら再び試作を繰り返し、半年をかけBP10の試作品を完成。社内のテストを通し、続いて当社のシュリンクフィルムを生産する岡山工場での製造試験に着手した。しかし、同工場ではそれまでバイオマス原料を使用したことがない。既存の製品も生産しているラインで、BP10の製造は対応可能なのか。バイオマス原料が他の製品に混入する可能性はないか。岡山工場のT.U.と協力し、検証を始めた。

まずは、バイオマス原料を使用するラインを選定。他の製品に混ざらないよう、細心の注意を払う。次に、実際のラインで一度生産してみた。これがうまくいったので、次は少しずつ製造時間を伸ばす。最初は4〜5時間の連続運転だったが、徐々に1日、3日、5日とロングランの製造が可能かどうかを検証していった。

「S.Y.さんから今回の開発を聞いた時、普通混ぜない素材を組み合わせていたので、正直なところ「本当に大丈夫か?」と思っていましたね。製造の試験の結果、工程自体は問題ないとわかったのですが、製造担当の目からするとやはり製品が白濁している。S.Y.さんに改めて本当に大丈夫かと問うと、S.Y.さんは「絶対に大丈夫です!これは売れます!」と何度も私たちを説得するんです。その熱意に押されて、製造側も気合を入れて開発に挑みました」(T.U.)。

こうして製品の製造も可能になり、お客様への営業が始まったのだが、ここで大苦戦を強いられる。BP10は、環境に配慮している点でお客様から興味を持ってもらえるのだが、バイオマス原料を使っている分既存の製品より少し値段が高かったのだ。「既存の製品と同等の価格であれば購入したいけど、コストアップはちょっと…」と断られ、1年以上売れない時期が続いた。

それでもS.Y.は諦めずに営業に励んだ。絶対に売れると信じていたからだ。すると、この逆境を救う人物が現れる。営業担当のH.T.だ。試作の段階からお客様や協力会社をS.Y.に紹介するなど開発を支えてきた。H.T.宛にあるお客様から「会社の環境方針を達成するために、環境に配慮した製品を使いたい。何か良いものはないか」と連絡がきたのである。BP10を思い出したH.T.がS.Y.と一緒に商談に伺ったが、また値段で断れるかと身構えていた。しかし、「業界初となる製品を使いたかったので、多少高くても問題ない」と購入が決まったのだ。

「苦戦する時期が続いたので、初めて売れてホッとしましたね。一社採用が決まると、うちでも使いたいと申し出てくれるお客様が現れ、次第に売上が伸びていきました。環境への配慮の必要性を感じる企業は多いです。しかし、誰も使用したことのない製品を初めて使うハードルが高いのも事実。価値のある新製品でも売れないことはあります。売れないからと諦めずに、何度も紹介し続けるのが営業の仕事だと思っています 」(H.T.)。

  • 無機溶剤・無臭で、環境負荷および人体への影響なく施工が可能
  • 上:従来品断面、下:Hydrotite AD type断面

  • 均一な施工品質の確保と作業工数削減を実現

  • ③使用シーンに合わせて最適なフィルム品質設計が可能

  • ④飲料のラベルをはじめ、身近なシーンで多様に全世界へ展開

Epilogue.
若手の挑戦が
タキロンシーアイの未来をつくる

BP10は、最初の一社から徐々に広まっていき、発売から5年で今では1億円以上を売り上げる製品になった。他社が取り組まなかった高い壁に、若手ならではの柔軟な発想で挑んだからこそ開けた道である。
「何度も失敗しましたが、環境に配慮した商品はいつか絶対に売れると信じ、挑戦し続けました。何より、2年目でまだまだわからないことも多い自分に、こんな自由な環境を与えてもらえたのが嬉しかったんです」(S.Y.)。

今後は、最近新たに登場した原料を試し、さらなる製品の改良や売上の拡大に取り組む予定。人と地球にやさしい未来を創造するために、今後もS.Y.の挑戦は続く。

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